【仕様】
・一つ前の逆さ版っぽい
・2カラム
・文字サイズ11pt固定
・本文幅85%
・透過フィルター仕様
【スクロール用文章】
「あッ、おじょうさん、帽子(ぼうし)に赤とんぼがとまりましたよ。」と、書生さんがさけびました。
赤とんぼは、今におじょうちゃんの手が、自分をつかまえに来やしないかと思って、すぐ飛ぶ用意をしました。
しかし、おじょうちゃんは、赤とんぼをつかまえようともせず、
「まア、あたしの帽子(ぼうし)に! うれしいわ!」といって、うれしさに跳(と)び上がりました。
つばくらが、風のようにかけて行きます。
かあいいおじょうちゃんは、今まで空家(あきや)だったその家に住みこみました。もちろん、お母さん書生(しょせい)さんもいっしょです。
赤とんぼは、今日も空をまわっています。
夕陽(ゆうひ)が、その羽(はね)をいっそう赤くしています。
「とんぼとんぼ
赤とんぼ
すすきの中は
あぶないよ」
あどけない声で、こんな歌をうたっているのが、聞こえて来ました。
赤とんぼは、あのおじょうちゃんだろうと思って、そのまま、声のする方へ飛んで行きました。
思った通り、うたってるのは、あのおじょうちゃんでした。
おじょうちゃんは、庭で行水(ぎょうずい)をしながら、一人うたってたのです。
赤とんぼが、頭の上へ来ると、おじょうちゃんは、持ってたおもちゃの金魚をにぎったまま、
「あたしの赤とんぼ!」とさけんで、両手を高くさし上げました。
赤とんぼは、とても愉快(ゆかい)です。
書生(しょせい)さんが、シャボンを持ってやって来ました。
「おじょうさん、背中(せなか)を洗(あら)いましょうか?」
「いや――」
「だって――」
「いや! いや! お母さんでなくっちゃ――」
「困(こま)ったおじょうさん。」
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