Title

【仕様】
・ありそうで無かった、文章用雛型
・文字サイズ変更あり
・本文幅80%
・あとがき無し

【スクロール用文章】
 つばくらが、風のようにかけて行きます。

 かあいいおじょうちゃんは、今まで空家(あきや)だったその家に住みこみました。もちろん、お母さん書生(しょせい)さんもいっしょです。
 赤とんぼは、今日も空をまわっています。
 夕陽(ゆうひ)が、その羽(はね)をいっそう赤くしています。

「とんぼとんぼ
 赤とんぼ
 すすきの中は
 あぶないよ」

 あどけない声で、こんな歌をうたっているのが、聞こえて来ました。
 赤とんぼは、あのおじょうちゃんだろうと思って、そのまま、声のする方へ飛んで行きました。
 思った通り、うたってるのは、あのおじょうちゃんでした。
 おじょうちゃんは、庭で行水(ぎょうずい)をしながら、一人うたってたのです。
 赤とんぼが、頭の上へ来ると、おじょうちゃんは、持ってたおもちゃの金魚をにぎったまま、
「あたしの赤とんぼ!」とさけんで、両手を高くさし上げました。
 赤とんぼは、とても愉快(ゆかい)です。
 書生(しょせい)さんが、シャボンを持ってやって来ました。
「おじょうさん、背中(せなか)を洗(あら)いましょうか?」
「いや――」
「だって――」
「いや! いや! お母さんでなくっちゃ――」
「困(こま)ったおじょうさん。」
(赤とんぼ/新美南吉)